シビック対メガーヌRS比較!FFの頂点を巡る二台の魅力に迫る

FK8

「FF最速」の称号をかけて争うシビックのライバル、メガーヌRSは一体どんな車なのか。

ニュルブルクリンクや鈴鹿でのタイム争いを繰り広げる2台の魅力を紹介!

今回は知ってるようで知らないルノー メガーヌRSに比重をおいて、シビックと比較しながら、どんな車なのか、一体どんなフィーリングをドライバーが味わえるのかレビューしていきたい。

シビックとメガーヌRSのそれぞれの生い立ち

ニュルブルクリンク北コースでのタイムアタック競争

タイプRとメガーヌR.S.は、スポーツカーの聖地、ドイツのニュルブルクリンク北コースでのタイムアタック競争で名を馳せる。この舞台には、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIも参加し、近年、これら三者間での激しい「ニュルバトル」が展開されている。

具体的には、先代タイプRが2014年5月(発表は翌2015年)に7分50秒63というタイムを叩き出し、それまでの先代トロフィーRの7分54秒36の記録を塗り替えた。その後、2016年5月には「ゴルフGTIクラブスポーツS」が7分47秒19でコースを駆け抜け、続いて2017年4月にはシビックタイプR(FK8)が7分43秒80という驚異的なタイムでFF車の最速記録を更新した。

メガーヌ4 R.S.トロフィーRによる最速記録更新

しかし、2019年5月には、ルノー・スポールが「FF車の最速タイム更新」と突如発表した。これは、メガーヌ4 R.S.としては初のニュル挑戦において、更に磨きをかけた限定版トロフィーRで達成されたもので、そのタイムは7分40秒100であった。これはまさに予想外の更新であり、その偉業には誰もが驚かされたに違いない。

しかしながら、この限定モデルは通常モデルとはかけ離れた軽量化が敢行されたモデルで、130キロの軽量化が実施されていた。そのために、メガーヌRSの最大の売りである四輪操舵システムと、DCTは外された楽しさよりも、速さをとことん求めたモデルである。

2台のスペック比較

では、早速だが2台のカタログスペックを比較していきたい。

シビックタイプRとメガーヌR.S.トロフィーではパワーウェイトレシオ、そしてリアのサスペンション形式から考えると、シビックタイプRが有利に思える。そのために、ルノー・スポールはニュルブルクリンクタイムアタック用ともいえる限定モデルを販売したことがわかる。

スペック表

シビックタイプR(FK8)メガーヌR.S.トロフィー
車重1390kg1450kg
最高出力320ps(235kW)/6500rpm300ps(221kW)/6000rpm
最大トルク40.8kg・m(400N・m)/2500~4500rpm40.8kg・m(400N・m)/3200rpm
排気量1995cc1798cc
駆動形式FFFF
フロントサスペンションストラットストラット
リアサスペンションマルチリンクトーションビーム

これらのスペックをみると、2台がかなり似ていることがわかるだろう。そして、シビックもメガーヌもベースモデルで、母国ではそれぞれ、庶民の足として活躍する大衆車、どちらも長い歴史を持つ台が異国の地ドイツでタイムを争っている点も面白いと言えるだろう。

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メガーヌRSトロフィーのフィーリング

タイム以外の味わい深さを秘めたハイパフォーマンスカー

メガーヌRSのドライビングは非常におもしろい。こういったモデルにおいては、速さやタイムに注目が集まるが、わたしたちが本当に求めているのは、ドライビングプレジャーではないだろうか。

”速さ”と”ドライビングプレジャー”は相関関係にあるように思われがちだが、決してはそうではない。

速いけどドライビングフィールは良くない車というのも数多く存在してきた。

このメガーヌRSは、そのニュルブルクリンクでの熾烈なタイム争いに勝つために、ドライビングプレジャーよりも”速さ”を優先したモデルかとおもっていた。しかし、それはいい意味で裏切られた。

このメガーヌRSは現代のスポーツカーでは珍しいドライバーが運転する喜びを低速領域から感じる事ができるのだ。

操る楽しさを感じられるコーナリングフィール

具体的には素直なハンドリングと気持ちの良いエンジンだ。メガーヌRSのハンドリングはとても素直だ。ドライバーがステアリングを切った瞬間にリアタイヤが追従してくる。

FF=アンダーとは無縁であり、このリニアな車の挙動がFFとは思えない素直な回頭性を生み出している。さらに、車がロールしてからの安定性や限界地点もとても高いように感じた。

ボディやサスペンションの剛性が高く、これらのパーツに力が掛かっても不要なジオメトリー変化が起きずに常に路面とタイヤが設置している感覚があった。

このため高速コーナーやステアリングを大きく切り込むようなタイトコーナーのように、足回りに負担がかかるコーナーでの安定性の高さが魅力的だった。

4CONTROLと呼ばれる4輪操舵システム

このメガーヌRSには4CONTROLと呼ばれる4輪操舵システムが搭載されている。

運転状況に応じてリアタイヤに舵角を与えることができる。具体的には、タイトコーナーでは逆位相にタイヤが切れることで俊敏性あるリアが巻き込む動きをし、高速コーナーでは同位相による確かな安定性を実現するのだ。

このシステムの概要を調べた際にドライビングに違和感が無いかが気になっていた。しかしながら実際にステアリングを握ってみると、変な介入が入っている違和感はなく、タイトコーナーでは自分のイメージよりも、よい一歩ステアリングを切り込める旋回性能を味わえた。これが4CONTROLの力なのだろうが、ドライバーが自然なフィーリングでこのハイテクシステムを運転できることがこの制御の完成度の高さを表しているように感じた。

この味付けは単純にニュルブルクリンクでの速さだけを求めたのではなく、ドライビングプレジャーと速さの2つを追いかけた結果がこのこだわりを感じる自然な味付けになったのだとおもう。

トルクステアが少ないFF車

また、FF車でありながら300馬力、トルク約40キロという大きなパワーを発揮しながらもトルクステアが少ないことが驚きであった。

タイヤがしっかりと路面に設置することにより、このトルクステアも抑えられているように感じた。

1.8Lとは思えない気持ちのいいエンジン

続いてはエンジンだが、メガーヌRSのエンジンは1.8Lとは思えないパワーを秘めている。欧州車らしい低回転からモリモリとパワーが出てくるトルクフルな味付けとなっている。それでありながら高回転域までしっかりと回す事ができるのが特徴だ。

近年のターボエンジンということもあり、許容される最大回転数は7000回転と決して高回転型エンジンとは言えないが、最高出力の300psは6000rpmとなっており、そこまでのエンジンの伸び方が1.8Lターボエンジンというよりは、もっと排気量の大きいNAエンジンのようなパワーの出かたであった。

実際にカタログスペックをみても最大トルクの42.8kg・mは3200rpmという低回転域から発揮され、1.8Lとは思えない力強さを味わえる。

セラミックボールベアリングを採用したターボチャージャー

これだけのパワーを絞り出すために、用いられるターボの軸受には軽量で耐久性にすぐれるセラミック製のボールベアリングを用いたタービンが採用されるなど、1分間に20万回近い回転を強いられるタービンをしっかりと支える設計となっている。このセラミックのボールベアリングは耐久性だけではなく、NAのような気持ちよさを生み出すレスポンスにも寄与している。

セラミックボールベアリングの効果

セラミックボールベアリングはスチールに比較すると軽く、硬く、滑らかで高温・高負荷な環境でフリクションロスを低減させる効果がある。従来のボールベアリングシステムと比較した場合に、摩擦を3分の2まで削減させることが出来るとのことだ。これによってターボの応答時間を格段に短縮させドライバーに気持ち良いフィーリングと1.8Lとは思えぬパワーを提供している。

メガーヌRSとシビックタイプR2台のフィーリングの共通点

正確なライントレース能力

メガーヌRSとシビックタイプRの2台の1つ目の共通点は、正確なライントレース能力だ。

どちらの2台にも共通して、とても高いボディ剛性と足回りの剛性をもっている。そのため、高速コーナーを曲がった際や、タイトコーナーで外輪に大きな荷重が掛かった際にタイヤの接地面が安定していることだ。

これによりタイヤのグリップ力をしっかりと引き出せているだけではなく、ドライバーは安心して速くコーナーを駆け抜けることができる。

リアサスペンションの設置感

そして2台ともリアサスペンションの設置感がとても高いことが上げられる。よくFFはフロントタイヤが操舵も駆動もしているため、リアにかんしては性能への寄与が低いのではないかという声が聞かれる。

しかしながら、車が速く走るためには4輪全てのタイヤのグリップ力を最大限に引き出すことがもっとも重要だ。だからこそ、FFのように後輪タイヤに荷重を掛けにくいFFはリアサスペンションの設計がとても重要だ。

ドライバーの技量ではカバーしにくい分、基本性能に依存する部分が多い。

この点において、メガーヌRSはリアサスペンションがトーションビーム、シビックタイプRはマルチリンク式とカタログスペックだけみると大きな差がある。シビックタイプRのリアサスペンションはリア全体が沈み込むようにストロークしていく感覚がありマルチリンクの強みを活かせている一方で、メガーヌRSもしっかりと路面を追従するという意味では大きく負けていないように感じた。

理想的な状態を維持するボディと足回りの設計

このような、ボディ、足回りがコーナーリングフォースが強く掛かる局面であっても、車とサスペンションが理想的な状態を維持しつづけ、設計どおりのサスペンションジオメトリーから生まれる正確なハンドリングフィーリングは、90年代~2010年あたりの車とは大きく違うフィーリングだ。

国が違えど高性能ハッチバックが似たようなフィーリングになっていくことは、解析技術や過去に築き上げてきた技術が蓄積されていった結果なのかもしれない。

メガーヌRSとシビックタイプR2台のフィーリングの違い

コンセプトの違い

2台の異なる点はコンセプトに違いを感じる。メガーヌRSは日常も楽しめるクルマづくりを優先しており、シビックタイプRはとにかくサーキットでの速さにこだわっているように感じた。メガーヌRSのほうが車の動きが大きく、サスペンションの乗り心地もマイルドだ。

そのため、街中の交差点を曲がるタイミングや車線変更、ジャンクションの合流などで車を操る楽しさが味わえる。またスポーツモデルを乗り継いで来た方には少々物足りないと感じさせる乗り心地の良さがある。

サスペンションの設定

一方でシビックタイプRは可変式のサスペンションで乗り心地を変更できるので、乗り心地を柔らかくしたり、固くしたりすることが可能なのだが、積極的にドライビングを楽しもうとすると手元のスイッチでRモードに切り替えて乗り心地を固くする必要がある。

シビックタイプRはダンパーを締め上げて車の姿勢変化をなるべく少なくして速く走らせるつくりとなっているのだろう。こちらのほうがサーキットのような路面が比較的フラットな場所での運転は楽しいはずだ。

想定するユーザー像の違い

このあたりは車作りの優先順位として一番上に、どんな場所で誰が運転を楽しむかのか。想定しているユーザー像が異なるように感じた。

どちらの2台も文句なしにドライビングプレジャーが味わえるとっても楽しいホットハッチだ。基本的には似ている点がかなり多い2台であるがゆえに、この微妙な差を比べてみると面白いだろう。

まとめ

今回の記事では知っていそうで、実は詳しく知らないメガーヌR.S.に焦点を当ててみた。とても完成度が高い1台で、是非シビックタイプR好きや国産スポーツカー好きにも乗ってみて欲しい1台だ。

外車のスポーツカーは心理的な抵抗感がある方もいるかも知れないが、世界の車を気軽に楽しめる日本に住んでいるのだからこそ逃す手はない。

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