R35GTRチューニングのいま|カスタムで1000馬力も夢じゃない!?

デビューから20年近くたつR35GTR、2024年モデルも販売されチューニングパーツから最新モデルの純正部品流用など、カスタムパーツはかなり充実してきた。

R35GT-Rの発売は2007年で、もう16年が経過している。

発売当初は国産車ではかなりの高額車だったことと、社外パーツの装着でディーラーでの整備ができなくなるという話が広まったことで、第2世代GT-Rのような感覚ではチューニングできない、という気配に捕らわれていた時期があった。

しかしこれだけの素材を前にして、ウデに覚えのあるチューニングショップがただ指を咥えていられるわけがなく、間もなくチューニングのベース車として扱われるようになり、次第にチューニングの内容もエスカレートしていった。

16年経った今では、1000psの大台越えも珍しいものではなくなり、チューニングパーツも相当に充実しているという状況になっている。

R35GTRのエンジンをカスタムするどんな車が作れるのか紹介してきたい

「VR38DETT」のチューニングの方法と可能性にフォーカスを当て、その魅力を掘り下げてみよう。

耐久性に優れるエンジン

純正エンジンの生い立ち

「R35GT-R」は日産の「GT-R」の名を冠するクルマとしては初めてV型のエンジンを搭載した車種となった。

当然、その理由は速さの追求に由来する。

第2世代のGT-Rに搭載されて新たな伝説を打ち立てた「RB26DETT」も充分な戦績を残したが、日本国内でしか販売されなかったドメスティックモデルの「スカイライン」の名を外して「GT-R」として独立したこのクルマが目指したのは、日本国内ではなく、世界に最高峰として君臨できる性能を備えたモデルだった。

そのため、それまでの標準モデルをベースにした上位グレードではなく、世界最高峰の性能を発揮するための専用シャーシの開発からスタートした。

動力性能の追求

エンジンに求められたのは、国際的なサーキットでポルシェなどのハイパフォーマンス車と互角以上に戦える動力性能だった。

コーナーリング特性を有利にするためにはできるだけ車体の中心に重量を集めることが重要であるので、コンパクトなV型が選ばれた。

パワーは排気量に依存するため、日産でも最大級の排気量となる3.8ℓにターボを組み合わせ、出力の目標値をクリアする。

耐久性の高い設計

排気量の設定は、もう一つの狙いである高い耐久性にも関わってくる。

ただ単にパワーを出すだけであれば、排気量が低くてもクリアできるが、耐久性を両立するとなると、

排気量を大きくして余裕を持たせることが重要となるのだ。

そのうえで、ドライサンプやオイルパンの最適化、オイル経路にクロスフロータイプを採用するなど、耐久性に大きく貢献する潤滑&冷却の安定度向上を図っている。

これらの工夫によって、サーキット走行をした後でもエアコンを効かせて帰宅できるというタフネスさを獲得することができた。

それらのポイントは、1000馬力を越えるハイチューニングにも耐えられる耐久性にも貢献していて、GT-Rチューニングの裾野を広げることに繋がっている。

チューニングの可能性

「VR38DETT」のチューニングは多岐にわたっている。

軽いものではECUのモディファイによるブーストアップが挙げられる。

エンジン本体には手を入れずにパワーアップが果たせるので、備わっている耐久性を大きく犠牲にすることなく、性能向上ができる。

ブーストアップでは飽き足らないという場合には、パワーの源でもあるタービンを大きな容量のものに交換することで、大幅なパワーアップが果たせるメニューがある。

これは吸排気、点火、冷却系など、エンジン周囲のあらゆる部分を交換するため、費用もかなりの額になるし、耐久性を保つには、エンジン状態の管理やオイル状態の維持など、エンジンへの気遣いがそれなりにシビアになる。

そして「VR38DETT」で最高レベルのチューニングは、1000psの大台を超えるケースも、今では珍しくないレベルに達している。

このレベルになると確実にエンジン内部に手が入る。ストロークをアップするクランクシャフトや、コンロッド、ピストンを交換して排気量を4ℓ以上まで拡大。

増した排気量の吸排気量に見合うビッグタービンを装着して、専用に設えられた吸排気系と、高性能なエンジンマネジメントのECUが必須となる。

しかし驚くのはそのパワーだけではない。

R35GT-R以前ではとても公道を走れる仕様ではないとされていた1000psというパワーを発揮しながら、普通に車検に通すことができて、日常的に支障なく使えるというのである。

この驚異の性能が実現できるのは、「VR38DETT」のポテンシャルが優れていることの証ではないだろうか。

有名なチューニング車両を紹介する

トップシークレットのR35GTRの紹介

第2世代GT-Rやスープラなどの国産ハイパフォーマンス車をベースにして、ゼロヨンやドリフト、最高速の各分野でトップレベルの記録を残してきた「トップシークレット」。

特に最高速にはこだわりが強く、R35GT-Rでも数々の記録を残している。

有名なところでは、ドイツのアウトバーンで341㎞/h、イタリアのナルドで358㎞/hを叩き出し、その筋では伝説となっているようだ。

その「トップシークレット」が製作したコンプリート車両が「Super GT-R 1100」だ。

排気量はノーマルの3799ccのまま、できるだけノーマル部品を使って1000psの大台を超えたハイチューンマシンだ。

実計測馬力は1111ps/6900rpmで、トルクが127㎏-m/4500rpm。

シリンダーブロックはノーマルで、ハイブーストに耐えられるよう、HKS製の鍛造ピストンに変更。コンロッドやクランクシャフトはあえて純正を使用するが、バランス取りをおこない、高精度で組み上げられる。

パワーの源と言えるタービンは、「RB26DETT」でも使用して実績のあるトラストの「TD06」をモディファイして装着。オリジナルのサージタンクで吸入効率を高めている。

燃料を供給するインジェクターは大容量の1300ccを装着。燃調や点火タイミングを制御するECUは純正書き換え式のPROcessR。

オリジナルの100φチタンマフラーを組み合わせている。

この車両はサーキットのタイムアタック用とのことで、足まわりと駆動系も強化しているとのこと。

サスペンションはトップシークレットのTSS-11車高調で固めて、エンドレス製レーシングキャリパーで制動力も確保している。

ワイドフェンダータイプの外装は、G-EFFECTのエアロキット。

フェニックスパワーのR35GTRの紹介

続いて紹介するのは、こちらも国産のハイパフォーマンス車のチューニングに情熱を傾けてきて、その筋では有名な存在となっている「フェニックスパワー」。

R35GT-Rは初谷開始からすぐにチューニングを手掛け、モデルチェンジの度にそれぞれのメニューに取り組んできたというこだわりを見せる。

こちらも、イタリアのナルドでの最高速アタックにR35GT-Rを持ち込み、356.9㎞/hをマークしている。

そのときのノウハウは、ここで紹介する車両にも活かされているという。

最高速を狙うためにはトルクも重要だが、高回転でのパンチが必要だという考えから、あえて排気量を上げずに、ノーマルシリンダー&クランクシャフトのままでチューニングの内容を組み立てた。

エンジン本体の基本構成はそのままだが、やはりハイブーストへの対応のため鍛造ピストンに交換し、各部のバランスを取り直して組み付けられている。

高回転でパワーを絞り出すように選ばれたタービンは、図らずも「トップシークレット」と同じ「TD06」。

ツルシの状態はTD06SH(20G)だが、インペラを25Gに組み替えて高回転特性を強めている。

これにオリジナルのパイピングキットを組み合わせ、「フェニックスパワー」が得意としているECUセッティングを施すことで、ブースト2.0キロ時で1031ps/6500rpm、126.24㎏-m/4800rpmというパワー&トルクを発揮させている。

排気系はオリジナルの100φ構成で、スポーツ触媒の装着で車検も対応できるとのこと。

足はアラゴスタの車高調を装着し、ブレーキはAPレーシングのファクトリーキットで強化している。

この車輌、前出のナルドでの最高速アタックを睨んで仕上げられていて、現記録を大幅に塗り替える400㎞/hオーバーを狙っているようだ。

シャーシの実測値を元にした計算上では405㎞/hが出せるとのことなので、あとは当日の状況次第ということになる。

中古車両を購入してカスタムするのもおすすめ

中古で買うなら前期型がコストパフォーマンスに優れる

元々初期モデルでも480psを発揮し、公道では到底扱えない大パワーを秘めているので、動力性能的には充分以上と言える。

それに加えて10万㎞以上走ってもまだまだ余力があるという話も聞く優れた耐久性も持ち合わせているので、エンジンに関しては年数や走行距離がかさんでいても大きな問題ではないという見方もできる。

なので外観のデザインや、多少のヤレが気にならないのであれば、比較的手頃に入手できる型落ちのモデルが購入の候補として有力になってくる。

ただし、初期など年式の古いモデルは、ミッションなどのいくつかの場所に不具合が出ているケースもあるようなので、対策品に交換が済んでいない個体を引いてしまうリスクがあることも頭に入れておこう。

今現在の相場を見ると、数年前より上がっているものの、初期の2007年モデル〜2010年くらいまでのモデルで、だいたい600〜800万円で流れているようだ。

エンジンをカスタムするなら高年式にこだわる必要性は薄い

もしエンジンや車両をカスタムしたいという場合も、高年式車にこだわる必要は無いだろう。

年式が新しくなるにつれてエンジンの出力は上がっているが、エンジンの基本構成に大きな変更は無く、出力の向上はタービンやカム、ECUセッティングの見直しで成されているようである。

そのため、ある程度大胆にエンジンのチューニングをおこなおうと考えているなら、

価格の高い高年式の車両にこだわる理由は薄いだろう。

その考えでいくと、理想は年式の古い少走行車両がベストかも知れない。

まとめ

ノーマルでも速いGTR、カスタムで大きく進化できることがわかった

ノーマルの状態でも充分以上に速く、気持ちいい走りが堪能できるR35GT-R。

しかも「VR38DETT」エンジンは、相当に酷使してもダメージを蓄積しないタフネスさも持ち合わせている。

そのため、軽めのブーストアップをおこなったくらいでは耐久性を大きく損なわないので、日常使いにも影響は少なく、パワーの向上を堪能できる。

そしてそのレベルでは満足できなくなった場合でも、市販のパーツは大量に販売されており、扱うショップもそれなりに多いので、

とりあえずのタービン交換から、夢の1000ps仕様まで、予算次第で望みのGT-Rに仕立てることができる。

まずはGTRに乗ってみたいという人はおもしろレンタカーでR35GTRも借りれるし、第2世代GTRも借りられる。ぜひ1回かりて夢を叶えて欲しい

こうして「VR38DETT」の魅力をいろんな側面から紹介してみたが、これでもまだまだ伝えきれないくらい、実際のエンジンの魅力は多い。

特に、アクセルを開けたときのシャープで力強いトルクの出方や、そのときの硬質で迫力のある排気音などは、実際に乗った人でないと実感できないだろう。

「おもしろレンタカー」では、ここで紹介している「R35GT-R」はもちろんのこと、前の世代の「R32、R33、R34のGT-R」も借りて乗ることができる。

予約が空いていれば、GT-Rのハシゴだってできてしまうかもしれない。

日産のその時代ごとの最高傑作に乗って、その魅力に触れて欲しい。きっと人気が高い理由が理解できるはずだ。