FL5はFK8からどれだけに進化したのか

FL5

この記事は新型シビックtypeR(以下、FL5)と先代シビックtypeR(以下、FK8)を比較しながら、カタログスペックの差に留まらない2台の個性をお伝えしながら、FL5の進化したポイントをお伝えしたい。

街乗りとワインディングの2つの場面においての詳細な試乗レビューも記載しているので、FL5に興味がある方は必見だ。

2台の特徴

FL5のシビックタイプRは、2022年に登場した最新モデルである。このモデルは、先代であるFK8からエンジンを引き継ぎながらも、その性能を一層高めている。デザイン面でも進化が見られ、先代モデルよりもスマートで大人っぽい印象を与えている。

この大人っぽいデザインに反して、空力性能は大幅に向上している。それが証拠に、この新型シビックタイプRはニュルブルクリンクでFF車両として最速のラップタイムを記録している。これはまさに、ホンダの技術と魂が高度に結晶化した一台である。

一方で、先代であるFK8型シビックタイプRは、2015年にデビューしたモデルである。この車は元々のベースグレードであるシビックに、2リッターのターボエンジンを搭載し、約300馬力というハイパワーを実現している。デザインにおいては、アメリカで人気がありそうなガンダム風の造形が特徴となっている。

このガンダムのようなデザインは、単に目を引くだけのものではない。多くの工夫が施されており、空力性能の向上にも寄与している。

以上の点からも、シビックタイプRはその各世代で技術とデザイン、性能が進化を遂げている車であると言える。

FL5がFK8から進化したポイント

FL5型と先代のFK8型のシビックタイプRには、多くの進化した点が見られる。この進化は主にエンジンと空力性能に関するものであり、それぞれが驚くほど詳細な改良を受けている。

エンジンの進化

まずエンジンについては、K20C型エンジンが継続して使用されているが、その内部構造は大幅に進化している。特に吸気効率と排気効率に関しては大きな改良が見られる。吸気ダクトの形状が変更され、エンジンルームの熱から遠ざけるように設計されている。

これにより、FK8型で既に工夫されていた吸気効率がさらに向上している。排気効率も、エキゾーストマニホールドの形状を最適化することで改善されている。これらの改良によって、エンジン出力は約10馬力向上しているが、最大ブースト圧は下がっている。この結果、ターボラグが減少し、エンジンの耐久性や熱対策が向上している。

進化した空力性能

空力性能について、デザインが大人っぽくスマートに変わりながらも、空力性能はFK8型よりも向上している。具体的には、フロント側とリア側でダウンフォースが大幅に増加している。これは多くの空力実験によって生み出された成果である。さらに、見えない部分でも、例えばアンダーパネルの形状が工夫されているなど、空力性能の向上に繋がる多くの試行錯誤が行われている。

徹底的に研究されたサスペンション

シビックタイプRの新型、FL5型では足回りにも注目すべき改良が施されている。その改良点は、特にサスペンションの剛性向上とコーナリング性能の強化に繋がっているのだ。

一般的なストラット型サスペンションは、ハブと接続される点が一つであり、これが弱点となる場合があります。具体的には、タイヤから受ける力がこの一点に集中してしまうため、サスペンションが正確に上下動するのではなく、斜め方向への力が加わってしまい、コーナリング性能が悪化する可能性がある。

この問題を解決するために、FL5やFK8ではストラット式のサスペンションながらも特殊な形状を採用している。この設計によって、コーナリング中にタイヤから受ける応力が適切に分散され、ダンパーの動きがスムーズになったり、キャンバー角変化が適切にコントロールできるようになる。

これによって、コーナリング時の安定性と制御性が向上し、より速いコーナリングスピードと安心感を提供しているのだ。

細かい改良であるかもしれないが、このような詳細な設計変更がFL5を高性能なスポーツカーとして、パフォーマンスを発揮する秘密とも言えるのだ。

以上のように、エンジンと空力性能の両方で多くの改良が施されており、FL5は先代であるFK8よりも高性能で洗練された一台となっている。

さらに、耐久性や熱対策などの進化が見られることも、走りを好むユーザーにとって大きな魅力だろう。

試乗レポート:街乗り編

FL5とFK8の実際に乗り心地やハンドリングについて、比較試乗した経験をもとに、街乗り性能の進化についてレビューしたい。

実際に街乗りをしてみると、カタログスペックの変化以上にFL5はFK8より進化したと感じたので、以下にそれぞれの観点から私の感じた印象をお伝えしたい。

大人も満足する乗り心地

FL5型に乗車すると感じる最も顕著な点は、FK8型と比較して乗り心地の良化である。FK8型もスポーツモデルとして十分に優れた乗り心地を有していたが、FL5型になることで上質な乗り心地が実現され、まるで高級車に匹敵する快適さが得られている。具体的には、サスペンションは依然として硬めであるが、ボディ剛性が高まり、車内への微細な振動が軽減されている。加えて、足回りの動きが安定し、大きな段差であっても車内に不快な振動が生じない。

街中でも扱いやすいハイパワー

エンジンの性能についても、電子制御による多様なモードが存在するため、街乗り時に過剰なパワーが発生することがなく、運転がし易い。かつてのハイパワー車では街乗りでアクセル操作に神経を使う必要があったが、FL5型ではそのような不便は一切ない。

エンジンレスポンスにおいても、ターボエンジンでありながら優れたレスポンスを持っている。これにより、アクセルを全開にせずとも、エンジンの感触を楽しみながらドライビングが可能である。街乗りや近所の買い物でも、わずかにアクセルを踏むだけでスポーツカーとしての快楽が味わえる。

日常使いの秀逸さ

このように上質な乗り心地が実現されたため、以前のシビックタイプRでは同乗者に女性を乗せることに抵抗を感じる方も多かったであろうが、FL5型においてはそのような状況は少ないと考えられる。乗り心地は街中ではメルセデス・ベンツのAクラス、高速道路ではCクラスに匹敵するほどであるからだ。

デザイン面においても、FK8型からの進化が見られる。特にインパネルのデザインが洗練され、全体としてスマートな印象を与える。このため、日常でのドライブにおいても、同乗者が不快に思うことは少なく、使い勝手の良い車と言えるであろう。

試乗レポート:ワインディング編

続いては、筑波山で比較試乗した印象をもとに、FL5がFK8から進化したポイントについて走行性能に関わる部分に焦点をあてて解説していきたい。

厚みのある低速トルク

2台を比較試乗した際に感じた差が大きかったのは、エンジンの低速トルクの厚みだ。FL5のほうが低回転時から太いトルクが出ているために加速性能が向上していた。

カタログスペック上はFK8とFL5は10馬力しか違わないが、実際に試乗したときに感じた加速性能や、コーナーの立ち上がりからの加速は10馬力以上に感じた。

また、エンジンレスポンスもFL5はFK8よりも進化しており、低回転から高回転までにかけて谷がなく、常に一定のレスポンスで高回転まで回っていくのが特徴的だった。

EK9などの物理的なカム切り替えが使用されていたころのVTECの時代と比較してはいないものの、タイプRモードに変更するとエンジンの回転数が中回転から高回転域にかけて勢いよく伸びる瞬間が存在した。

またFL5にはEK9のようなカムが切り替わった瞬間に爆発するようなパワーを味わえる楽しさや高揚感は無いが、速いタイムを目指す場合には、常に最大トルクを発生させる滑らかなエンジン曲線が望ましいとされる。

FL5はまさにそれを体現するような緻密なエンジン制御が行われており、常にトルクバンドを維持する高効率なエンジンに感じられた。

足回りの進化を感じる、トラクションとコーナリング性能

足回りに関しても、FL5型はサスペンションが緻密に設計され、設置感が優れていた。これが街乗りにおいては乗り心地の向上につながり、ワインディングでの走行ではトラクション性能の向上として足回りの進化が乗り味の差に現れていた。

特にFF車はハイパワーを適切に制御するのは難しい。しかし、FL5ではフロントサスペンションの優れた設計により、地面への力がしっかりと伝わっていた。そのため、エンジンのパワーが加速性能として有効に働いていたのが驚きであった。また320馬力ものパワーを発するにも関わらずトルクステアが発生しない点も魅力的だった。

この進化がエンジンの進化以上に大きなモノで、ワインディングのコーナリングの気持ちよさと正確無比なハンドリングをしたざさえするものであった。

FK8も十分に速いコーナリング性能を秘めていたが、FL5は常にタイヤと路面がピッタリとくっついてるような安心感があり、ドライバーがステアリングを切った瞬間に車が動いてくれる挙動をしたのだ。

そのためドライバーは思い通りに正確無比なライントレースをおこなうことができ、FF車とはおもえない気持ちの良いコーナリングフィールを味わう事ができた。

ただし、1つだけ欠点があった。それは「+Rモード」で荒れた路面を走行すると、サスペンションのセッティングがあっておらず、車体が跳ねてしまったことだ。これはFK8は同じ路面を+Rモードで運転しても見られなかった現象であり、今後改良して欲しいと感じた点でもあった。

(もちろん+Rモードを解除してスポーツモードで走行すれば、跳ねることなく先程述べたとても高いコーナリングフィールを得る事ができる)

総評

FL5は、全体的に見て後継モデルらしく性能が向上していた。

それでもFK8には独特のデザインなど、個々に魅力的な点がある。

どちらのモデルを選ぶかは最終的には好みや用途に左右されると思う。

私としてはより高い性能と最新技術を求めるならFL5がおすすめだ。

常に高いトルク、トラクションを稼ぐならが、直線もコーナーの立ちあがりも加速していく。さらにコーナリングのボトムスピードも正確で速いのがFL5の特徴だ。

まとめ

ホンダの新型シビックタイプR、FL5はFK8と比較しても、エンジン、サスペンション、ハンドリングともに進化を遂げていました。単純な性能やスピードではFL5が上でしょう。

しかしながら車の面白いところは、単純に速さや性能では無いところです。

特に音やコーナリングフィール、加速感はドライバーの好みが分かれるところ。

FL5とFK8はそれぞれに独自の魅力があり、とても味わい深い2台でした。

車選びは最終的には自分の好みに合った一台を選ぶことが重要だとおもう。

この記事を読んだ方はおもしろレンタカーで実際に試乗して、ホンダの進化した「スピリット」を感じてみて欲しい。