新型フェアレディZプロト試乗徹底レビュー ―“ドライバーズ・フィール”を語り尽くす

進化したZが放つ「新しいGT」の世界観

2023年、久々のモデルチェンジで現れた新型フェアレディZ。そのプロトスペックを筑波山で試乗してきた。まず一言で言うなら、このクルマはピュアスポーツカーではなく、現代的なグランドツアラー(GT)としての色が濃くなった、と感じた。

最近のZシリーズ、特にZ33やZ34は、ロングツーリングもこなせる懐を持ちながらスポーツカーらしいドイツ車のような硬質なフィーリングが持ち味だった。しかし今回のプロトスペックは、“あえて”それを薄め、快適性を優先している。乗り心地が良くなっていると感じた。今回のレビューでは筆者の感じたドライバーフィールを中心にプロトスペックの魅力を語りたい。

高速巡航・街乗り・ワインディング――場面ごとの“乗り味”を語る

プロトスペックの足回りは、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンク式という伝統のレイアウト。ダンパー&スプリングはZ34から継承しつつも、しなやかさを重視した新設計だが、ピッチング(前後の揺れ)やロール(横揺れ)は自然な範囲で収まっている。

実際に乗ってみても極端な硬さや突き上げ感がなく、試乗してすぐの印象ではまるで一昔前の3シリーズに乗っているかのような欧州のセダンのような乗り心地で非常に印象がよかった。詳細な試乗レビューに関しては、街乗り・高速巡航・ワインディングと順を追って述べていこう。

街乗りでは、車高が低くロングノーズで運転がしにくいイメージがあるかもしれないが、見切りの良いボンネット形状や、適度に太いステアリングのおかげで、思いのほか運転しやすい。またシートポジションは車の外観からイメージするよりも高いところに調整が可能なので、SUVやミニバンから乗り換えると抵抗があるかもしれないが、セダンに乗られていた方ならすぐに順応できるだろう。

また、エンジン特性も低速域からトルクが厚く、ストップ&ゴーが苦にならない。さらにいえば、ターボラグもほとんどないので、ギクシャクした走りにならぬよう気を遣う必要もない。さらに、クラッチの繋がりも自然で、「普段使いの実用性」と「スポーツカーのワクワク感」がうまく両立している。

高速道路では、ステアリングの中立付近がしっかりとしており、進路の安定感が抜群。轍や橋のつなぎ目でも、サスペンションがしなやかにいなしてくれるため、同乗者も疲れにくい。6速で流していてもエンジン回転数は抑えめで、遮音性も高く、高級セダン的な快適さを味わえる。

もともとこのRZ34はトランクスペースを犠牲にしてまで足回りのスペースを確保しているために、足回りの素性がとてもいいのだ。高級セダンもスポーツカーも足回りに求められる基本的な要素は共通項が多い。

ベースに良質な出汁があれば、どのような料理も美味となるように、最後の味付けをスポーツ方向に寄せるか、乗り心地によせるか。最後は作り手の匙加減ということになる。例えば、東京から名古屋までの長距離移動や東京から長野や静岡まで日帰りでゴルフに行くといった長距離ドライブなんかには最適な緩さがある味付けだ。

また今回のメインの試乗場所である筑波山でドライビングフィールを試してみた。ゆっくりワインディングを走るなら素直なハンドリングでドライブを楽しめる。車の重心も低く、前後の重量バランスも悪くない。さすがはスポーツカーという印象だった。

一方、ワインディングでペースを上げると、印象は大きく変わった。初期のロールがやや大きめで、コーナーの進入〜脱出で“粘る”より“くだける”ような挙動が出る。ダンパーの減衰特性がもう少し締まれば、もっと攻めた走りにも応えてくれそうな余白を感じた。正直なところ、この点は残念に感じた。

このあたり、Z34は「ロングツーリングもこなせてワインディングも楽しめる高バランスな足」だったのに対し、プロトスペックは「ゆったり構えて、ロングツーリングを重視した足」になっている。

まとめると、スポーツカーに乗りたいが日常の移動手段としての快適性に犠牲を出したくないユーザーにとっては最適な味付けかもしれない。しかし、スポーツカーならサーキットやワインディングを楽しみたいという方は不満が残るであろうというのが正直なところである。

ただし、このRZ34は先代Z34と基本設計が変わっていないことを考えると、設計自体のポテンシャルは高いため、快適性よりもワインディングでの限界性能を上げたいユーザーにとっては豊富なアフターパーツからカスタムで自分好みのセットを見つける楽しみもある。

400馬力ツインターボ+FR+6MTの“珠玉のパワートレイン”

このクルマ最大の歓びは、**3.0L V6ツインターボ(VR30DDTT)**をFRで受け止め、6速MTで操ること。スペックは405PS/6400rpm・475Nm/1600-5600rpmと圧巻だが、数字以上に“フィール”が素晴らしい。

まず、低回転から太いトルクが立ち上がるので、発進や加速でのラグはほとんど感じない。ターボ車でありながら自然吸気エンジンのようなレスポンスも持ち合わせており、どの回転域でもアクセルを踏み込んだ瞬間にリニアな加速が得られるため、ターボ車特有の回転数を意識する必要はほとんどない。

また、2速から3速でワインディングを走らせると、コーナー出口で「グッ」と背中を押されるような力強い加速感を味わうことができた。しかも最近のスポーツカーには珍しく電子制御の介入が遅めで、リアがしっかり動き始める「ギリギリ手前」までドライバーに委ねてくれる。

要は、「クルマを振り回す楽しさ」を久々に感じさせてくれる1台。FR+400馬力を“自分の右足と両手”でコントロールできる喜びは、車好きなら絶対に刺さるはずである。

デザイン&スペック詳細:唯一無二の「プロトスペック」を徹底解剖

今回試乗したプロトスペックはいわゆる素のグレードとは内外装が異なるので、ここでは簡単にプロトスペックの魅力を紹介したい。

新型フェアレディZプロトのエクステリアには、他のモデルにはない個性が多く詰まっている。まず、限定色の「イカズチイエロー」とブラックルーフの組み合わせは、このプロトスペックだけの特別な仕様となっており、往年のZ432やS30を思わせるようなクラシックかつスポーティな雰囲気を演出している。

個人的にもこのフロントデザインは非常に洗練されていると感じた。また、19インチの鍛造ホイール(RAYS製)は軽量かつ高剛性で、走りの質感をワンランク上のものにしている。イカズチイエローキャリパーや専用エアロパーツも特別感を強調し、細部に至るまで特別なこだわりが感じられる。

ボディサイズは全長4,380mm×全幅1,845mm×全高1,315mmと、現行スポーツカーの中でもワイド&ローなシルエットを実現しており、走りだけでなく見た目においても存在感を発揮している。ホイールベースは2,550mmで、前後重量配分のバランスにも優れ、運動性能と直進安定性の高さをしっかり両立している。

インテリアにも、プロトスペックならではの上質さとスポーツ性が融合している。イエローアクセントが加えられたインパネや、専用ステッチが施されたスエード調と本革コンビのシートは、見た目だけでなくホールド感や質感にも優れ、長距離ドライブでも疲れにくい設計である。

さらに、大型のデジタルメーターと9インチのモニターは、スポーツドライブでも日常でも抜群の視認性を誇る。シフトノブやペダル、ハンドルといった操作系にも細かな質感向上が施され、全体として「スポーツラグジュアリー」と呼ぶにふさわしい空間に仕上がっている。

主なスペック

  • エンジン:VR30DDTT型 V型6気筒DOHC 24バルブ ツインターボ
  • 最高出力:405PS/6,400rpm
  • 最大トルク:475Nm/1,600-5,600rpm
  • トランスミッション:6MT(または9AT設定あり)
  • 車両重量:1,610kg(6MT車)/1,670kg(9AT車)
  • サスペンション:前 ダブルウィッシュボーン/後 マルチリンク
  • ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
  • タイヤ:前255/40R19、後275/35R19(専用RAYSホイール装着)

プロトスペックと標準RZ34の違い

  • 基本スペックやパワートレイン、シャシーは共通。
  • 違いはカラー・ホイール・内外装アクセントなどの限定装備。
  • 機能面での差は最小限なので、「デザイン重視か・コスパ重視か」で選択するのがオススメ!

まとめ

現代GTとして生まれ変わった新型フェアレディZプロトは、Z史上もっとも快適で長距離移動に向いた“GT的資質”と、FR・6MTならではのダイレクトな操縦フィールを高次元で両立している。荒れた路面やロングドライブでも、しなやかに入力を受け止める足回りや、包み込むような居住性の高さが感じられる。

400馬力を誇るツインターボエンジンとFRレイアウト、そして6速MTの組み合わせが生む非日常感は、スポーツカーの雰囲気を手頃に味わうには十分である。さらに細部の素材や操作系も磨かれ、日常の使いやすさと走りの楽しさがどちらも犠牲になっていない。

「もっと硬派なZが欲しい」人にはカスタムの余地も十分にあるが、ほとんどのオーナーにとっては「これもアリだな」と思わせてくれる普段遣いのしやすさ、そしてワインディングに持ち込まなくても手頃に味わうことが出来る圧倒的なパワー、これが新型Zの大きな魅力である。

時代の変化とともに生き続ける“現代のZ”、ぜひ一度あなた自身の手で味わってみて欲しい。おもしろレンタカーでは、このようなレアでマニアックな車を手頃に借りることができる。車好きの方は是非一度現代のZを楽しんで欲しい。