ただの“特別仕様”ではない、Zの理想形

フェアレディZ NISMOに乗った瞬間、明確に感じたのは「調律されたチューニングカー」ということでした。見た目の派手さだけではなく、シャシー、パワートレイン、空力、音、快適性まで -すべてがノーマルZとは一線を画している。
RZ34ノーマルモデルでは感じていたリアのふわつきや、コーナーでのナーバスな挙動も、NISMOではしっかりとした接地感と安心感へと置き換えられている。この走りの変化は、単純に車高を下げたり、エアロパーツをつけたりと、ユーザーがカスタムパーツを付けてチューニングするのでは実現しにくい、快適性と走りのバランスを高次元に両立したものであった。
走りの質感:コーナーで攻める楽しさ、安心して踏める足まわり
NISMO専用のサスペンションは、19インチの鍛造アルミホイールと専用タイヤ、強化ブレーキと組み合わされ、まさに「意のままに走るZ」を体現してくれる。ワインディングでは、ノーマルZに比べて車体の動きがわかりやすいというだけでなく、荒れた路面でも落ち着いているという点が印象的であった。
ピッチングやリアのバタつきが抑えられていて、ノーマルZでは不安だった“攻めたときの挙動”が見事に改善されている。またアクセルを踏み込んだ際もノーマルZではトラクションが逃げてしまっていた所がしっかりと路面にパワーを伝えられる仕様となっていた。このあたりはNISMO仕様のダンパーが的確に機能していると感じた。
さらにスポーツモードにすればアクセルレスポンスもシャープになりレスポンス良く応答するため、コーナー中の車の姿勢をアクセルのオンとオフでコントロールしやすく非常に扱いやすかった。
エンジン&トランスミッション:高回転域が気持ち良すぎる
搭載されるエンジンは、3.0L V6 ツインターボ(VR30DDTT)。420PS/520Nmというスペックは、ノーマル比で+15PSのパワーアップ。令和のご時世にほとんど電子制御が介入しないハイパワーFRを味わえるのが大きな魅力だ。
ノーマル状態で420馬力も出ているので故障や耐久性の面で不安になるエンジンチューニングをしないでも十分満足できるパワーを秘めている。ただ数値以上に驚かされたのは、5000回転以降の吹け上がりの軽さと気持ちよさだ。
アクセルに対するピックアップも良く、回す楽しさに満ちたチューニングとなっている。ノーマルZのエンジンレスポンスも現代の排ガス規制のなかではレスポンスのいいエンジンだが、NISMOのエンジンレスポンスを味わってしまうと物足りなくなってしまう。
特にこのターボは敢えて小径タービンを使いターボラグを減らす作りになっており、エンジンレスポンスが向上したことでこのセッティングがより活かされる設計となっている。アクセルを踏んだ瞬間に大きなトルクを感じながらワインディングを駆け抜ける喜びを味わえる点は非常に魅力的であった。
一部では「マニュアルが無いのは残念」との声もあるが、実際に実際に走行すると9速ATの完成度が高く、シフトの素早さやギアの繋がり方はまさにスポーツカーそのもの。 「MTでないとつまらない」と感じる余地はほとんどなく、むしろこのATだから常にトルクバンドで速く走れる印象だった。
エクステリアとインテリア:見た目も走りもNISMO仕立て
外観では、専用フロントバンパー/リアバンパー/サイドシル/リアスポイラーなど、随所にNISMOらしい空力処理が施されている。派手なダウンフォースではなく、リフトフォースを抑えて接地感を高める設計で、直進安定性や高速域での安心感にも貢献している。
実際に高速道路を走行してみても空力でバランスが取れていたため、リフトが少なく、前後のタイヤの接地感が高まり、車の不要なピッチングも抑えられており日常領域においても恩恵を感じた。
内装は、RECARO製フルバケットシートとスエード巻きステアリングが標準装備。操作系の剛性感や着座位置も、ノーマルZからさらにスポーティさが強調されており、「走るための空間」に仕立てられている。同時に内装の質感も高く、日常でゆっくり運転をしている際でも所有欲を満たしてくれる雰囲気がある。
サウンド&フィーリング:走るたびに気分が上がる
エキゾーストサウンドも、NISMOではしっかりとチューニングされており、特に高回転域での音の伸びと高揚感が印象的である。単に「うるさい音」ではなく、ドライバーのテンションを高めるように調律された音作りがされており、走るたびにワクワクさせてくれる。
快適性と日常性能:意外にも“乗れる”NISMO
これだけ足まわりを固めたスポーツモデルでありながら、日常域での快適性がしっかり確保されていることも特筆すべき点である。たしかにノーマルZと比べれば足は引き締まっていますが、収まりの良いダンピングのおかげで不快な突き上げはほとんど感じない。
特に輸入車のスポーツモデルに乗り慣れている方であれば、このNISMOの乗り心地を「むしろ快適」と感じる方も少なくないはずである。
総評:フェアレディZ NISMOは、RZ34の“理想形”

ノーマルZで感じた惜しさを「すべて改善・進化」させたモデルがこのNISMOである。
「グランドツアラーとしての快適性」と「スポーツカーとしての俊敏性」を、ここまで高次元で両立させた1台は希少で、RZ34はZ34をベースに開発しておりセッティングなどを煮詰める開発期間の余裕もあったはずである。ノーマルZの足回りのセッティングは最初からNISMOのような味付けにしてほしかったと思わせる完成度であった。
RZ34はノーマルとNISMOでかなりの性能差があった。しかしながら値段も大きな差がある。金額を考慮したうえでどちらのモデルを選ぶべきかは非常に難しいと思われる。2台を比較して悩んでいる方はどちらのモデルも扱っているおもしろレンタカーで乗り比べてみてほしい。
きっとあなたに最適なZが見つかると思われる。
最終まとめスペック比較:NISMO vs ノーマル RZ34
項目 | フェアレディZ NISMO(2024) | フェアレディZ(ノーマルRZ34) |
エンジン形式 | 3.0L V6ツインターボ(VR30DDTT)[NISMO専用チューニング] | 同左(VR30DDTT) |
最高出力 | 420PS(309kW)/6,400rpm | 405PS(298kW)/6,400rpm |
最大トルク | 520Nm/2,000–5,200rpm | 475Nm/1,600–5,600rpm |
トランスミッション | 9速AT(専用制御/SPORT+モード) | 6速MT/9速AT |
サスペンション | NISMO専用スポーツセッティング | 標準セッティング |
ホイール/タイヤ | NISMO専用レイズ製19インチアルミ鍛造ホイール | 18or19インチ(グレードによる) |
ブレーキ | 大径ローター+強化キャリパー(NISMO専用) | 標準スポーツブレーキ |