日本車メーカーが日本国内で販売しているクルマにCVTを採用しているケースをよく見かける。また、日本独自の規格である軽自動車には、CVTが積極的に採用されている。なぜ、日本車のトランスミッションにCVTが搭載されることが多いのだろうか。今回は、日本車にCVTが多い理由について解説する。
CVTとは?メリット・デメリットも解説

そもそもCVTとは、クルマの変速機「トランスミッション」の種類の1つで、無段階変速機とも呼ばれる。“無段階変速機”と表記されることからも分かるように、CVTは有段ギアのトランスミッション(6速や8速のATやDCT)のように複数のギアがあるわけではなく、無段階で変速比を変えられる機構(プーリーの幅を無段階に変える構造)となっていることが特徴だ。
そのため、有段ギアのように変速時のショックがないことがメリットとなる。また、どの速度域でも最も効率の良いエンジン回転数で走行できるため、燃費性能に優れるというのもCVTのポイントだ。
一方、加速時に変速ショックがないものの、アクセルペダルの踏み込み量およびエンジン回転数の上昇と速度がリンクしないといったデメリットがある。このように、運転操作と速度の上昇が連動しないフィーリングが欧州などで受け入れられなかったため、日本で販売されている日本車でCVTを採用するケースが増えた。
しかし、これらのネガティブなポイントを自動車メーカーがそのままにしておくわけがない。日本の自動車メーカーは、CVTの研究開発を進め、加速時に速度が乗らないフィーリングを改善しようとした。その結果、CVTが登場した当初と比べて、格段にドライブフィールが向上した。
だが、欧州車でCVTが採用されるケースが増えることはなかった。そのため、今もなおCVTを積極的に採用しているクルマは日本車が多い。
なぜ、進化したにもかかわらず、日本車にのみCVTが多く採用されるのだろうか。また、日本の自動車ユーザーはCVTを受け入れているのだろうか。
日本車にCVTが多い理由とは?

日本の道路は、速度域が低く、低速走行やストップ&ゴーのシーンが多い。また、高い速度域で一定の速度で走り続ける環境(いわゆる高速道路)の速度も他国のハイウェイと比べると低い傾向にある。
この日本独自の道路事情により、日本の自動車ユーザーは、多少加速時のフィーリングが良くなくても変速ショックがないスムーズな走りを求めるようになった。このような理由により、日本国内に流通しているクルマの多くにCVTが採用されていると考えられる。
加えて、市街地走行における燃費性能を重視する日本の事情も、CVTの普及につながった可能性が高い。(ちなみに、高い速度域かつ一定速度で走行するシーンが多い欧州や北米では、高速巡航における燃費性能が求められる傾向にある)
このような、日本ならではの事情により、有段ギアのトランスミッションより、変速ショックがなく無段階に変速比を変えられるCVTが日本車に多いと考えられる。
日本車以外のクルマに有段ギアが多いワケは?

日本と並ぶ自動車大国である欧州や北米では、一定速度で走行しているときの燃費性能、高速道路での合流・追い越し・再加速時のレスポンスの良さが求められる。そのため、よりダイレクトな加速を得られる有段ギアのクルマの方がマッチする。
また、欧州にも日本の道路のようなストップ&ゴーのシーンがあるが、隙を見てサッと加速してすぐに速度を乗せられることを重視する場合が多い。よって、アクセルペダルの操作とクルマの速度がリンクする有段ギアのクルマの方が良いといえる。
その他にも、さまざまな理由があるが、上記に挙げた理由などにより日本車以外ではCVTよりも有段ギアのクルマ(ATやDCTなど)が多いと考えられる。
日本の環境で育てられたCVTは日々進化している

CVTは、アクセルペダルの操作に対し、クルマの速度が乗るまでに時間がかかることがある。これを「ラバーバンドフィール」というが、このCVT独自のフィーリングが、“どかしい”あるいは“かったるい”と感じられる点である。
先述したとおり、CVTの研究開発によってラバーバンドフィールは改善してきているが、有段ギアのAT(特にDCTやロックアップ機能付きAT)と比べると、速度が乗るまでのタイムラグが気になる。
しかし、CVTも使い方によってはダイレクト感ある走りに変えることができる。それがハイブリッドカーである。
ハイブリッドカーは、トルクが必要な動き出しの領域を電気モーターが担い、速度が高くなってきたらモーター+エンジンもしくはエンジンの走行に切り替わるシステムになっている場合が多い。
このハイブリッドカーのように、それぞれの動力源が得意とする領域を適切に使い分けることで、走り出しの鋭さとCVTの滑らかな変速を両立させることができる。よって、CVTは動力源の組み合わせ次第で、快適な走行を実現することも可能であると言える。
ゆったり走りたいならCVTはおすすめ

CVTは、変速ショックがなく、滑らかでスムーズな走行が特徴である。よって、快適性を重視したり、ゆったり走りたい人に最適なトランスミッションだといえる。
一方で、スポーツカーのような加速性能や俊敏な発進を求める場合には、CVTよりも有段ギアのトランスミッションの方がよいだろう。しかし、トランスミッションの違いは実際に運転してみなければ判断が難しい。そのようなときにおすすめなのが、さまざまなクルマをレンタルできる「おもしろレンタカー」だ。
トランスミッションの違いやエンジンの違いなど、一般的なレンタカーでは難しい乗り比べを行いたい場合には、「おもしろレンタカー」を利用するのが望ましい。