クルマのエンジンは、直列型またはV型のいずれかで、シリンダー(気筒)の数は2気筒・4気筒・6気筒・8気筒など偶数が主流となっている。言い換えると、小排気量エンジンの3気筒を除けば、奇数シリンダーはほとんど存在しないということだ。つまり、5気筒や7気筒といった奇数のエンジンはレアな存在ということになる。
この記事では、かつて存在していた貴重なV型5気筒エンジンがどのようなものかを解説するとともに、現在唯一アウディが一部モデルで搭載している直列型5気筒エンジンについて紹介する。出会う機会が少ない激レアエンジン「5気筒」の特徴や魅力とは何だろうか。
V型5気筒エンジンとは?

V型5気筒エンジンは、文字通りシリンダー数が5気筒のV型エンジンである。搭載されていたモデルは、フォルクスワーゲン パサートやボーラだ。また、クルマではないが、ホンダのバイクにV型5気筒エンジンが搭載されていたことがあった。
クルマやバイクに搭載されていたことがあるV型5気筒エンジンは、現在の主流エンジンとなっていないことから、非常にレアな存在であることは間違いない。
非常に珍しいV型5気筒エンジンのレイアウトは、片側が3気筒、もう一方が2気筒で構成される。そのため、直列3気筒エンジン程度の全長でV型エンジンが作れるということだ。さらに、フォルクスワーゲンが搭載していたV型5気筒エンジンは、バンク角が鋭角であったためエンジンの幅も抑えられていた。
V型5気筒エンジンは、省スペースで排気量を拡大したい場合に、V型6気筒や直列6気筒よりも有利なレイアウトである点がメリットだ。しかし、V型6気筒エンジンや直列4気筒エンジンまたは直列6気筒エンジンなど偶数シリンダー数のエンジンと比較するとバランスが悪かったり、排気干渉したり、バランサーが必要になったりする点などがデメリットとなる。
エンジンの長さや幅をコンパクトにしつつ、エンジン排気量を上げられるV型5気筒エンジンは、大きすぎないエンジン寸法と排気量に比例するパワーとの両立が可能な、バランスの取れたエンジンといえるが、現在の自動車市場を見てもわかる通り普及はしなかった。
5気筒ならではの独特なサウンドが楽しめる
さまざまなメリットがあるものの、デメリットの方が目立ってしまい普及しなかったV型5気筒エンジンは、排気干渉というデメリットがもたらす独特なエンジン音が魅力となっている。
直列4気筒エンジンや直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジンなど、偶数シリンダーのエンジンはエンジン回転数が上昇するにつれて、スムーズに抜けるエンジンサウンドとなるが、V型5気筒エンジンは偶数シリンダーのエンジンとは違ったエンジンサウンドを楽しめる。
しかし、V型5気筒エンジンが搭載されていたフォルクスワーゲンのパサートやボーラは、中級クラスのモデルだったため5気筒エンジンの独特なサウンドを存分に楽しむのは難しい。
この5気筒エンジンならではのサウンドを楽しみたいのであれば、レイアウトが異なるものの、現行モデルとしても販売されているアウディの直列5気筒ターボエンジンのサウンドを体感してみるとよいだろう。
同じく珍しい5気筒エンジン「直列5気筒」
アウディ RS3スポーツバックやRS3セダンなど一部モデルに搭載されている直列5気筒ターボエンジンは、直列4気筒よりもエンジン排気量を大きくすることができ、直列6気筒エンジンよりも全長を短くできるエンジンだ。
かつて、直列5気筒エンジンは、ホンダやボルボなども搭載していたが、2025年時点においてはアウディのみが採用している。
エンジンオブ・ザ・イヤーを受賞したことがあるアウディの直列5気筒ターボエンジンは、エンジン回転数を上げていくと、低音域と高音域の両方が同時に響く。言い換えると、エンジン回転数を上げるとともに、低音域と高音域が調和し、独特のハーモニーを奏でるということである。
アウディのスポーツモデルである「RS」の一部モデルに搭載されている直列5気筒ターボエンジンは、エンジン排気量が2.5L、最高出力294kW(400PS)/5,600-7,000rpm、最大トルク500Nm(51kgm)/2,250-5,600rpmというスペック(これはRS3スポーツバックおよびRS3セダンの最高出力および最大トルク)を誇る。ちなみに、駆動方式はウディの代名詞ともいえる四輪駆動システム「quattro(クアトロ)」だ。
Cセグメントのハッチバック(RS3スポーツバック)またはセダン(RS3セダン)や比較的コンパクトなSUV(RS Q3およびRS Q3スポーツバック)には、オーバースペックともいえるエンジンではあるが、四輪駆動システム「quattro(クアトロ)」によって挙動が乱れにくく安定した走行ができる。
5気筒エンジンならではの独特なハーモニーを楽しみたいのであれば、ぜひ一度アウディRS3スポーツバックやRS3セダンに乗ってみるとよいだろう。もちろん、RS Q3やRS Q3スポーツバックでも直列5気筒エンジンのサウンドを楽しむことはできるが、独特なハーモニーを奏でる直列5気筒エンジンのサウンドと、ハイパワーターボエンジンの高い運動性能、クルマを操る楽しさを同時に味わいたいのであれば、RS3スポーツバックまたはRS3セダンがおすすめだ。
激レアなエンジンを搭載するクルマに乗る方法とは?

激レアなエンジンともいえる「5気筒」を搭載するクルマは、非常に珍しく、目にする機会や乗る機会が少ない。そんな直列5気筒エンジンならではのパフォーマンスやサウンドを楽しみたいのであれば、多種多様なクルマをレンタルできるおもしろレンタカーがおすすめだ。
おもしろレンタカーであれば、珍しいエンジンを搭載するクルマや名車と言われるクルマ、高性能モデルなど、さまざまな激レア車に乗ることができる。
この機会に、おもしろレンタカーを利用して、5気筒エンジンをはじめとする激レアエンジン搭載車や語り継がれる名車に乗ってみてはいかがだろうか。
珍しい5気筒エンジンを楽しめるのは今が最後?!

V型5気筒エンジンは、かつて販売されていたクルマには搭載されていたが、現在販売されている現行モデルに搭載されていないため新車で購入することはできない。ただし、直列5気筒エンジンはアウディの一部モデルに搭載されているため、新車で購入することが可能である。しかし、アウディの直列5気筒エンジンもいつまで販売されているかはわからない。もしかしたら、近いうちに販売終了となる可能性すらある。
その理由は、クルマに求められる環境性能が厳しくなっているためだ。クルマに求められる環境性能は、環境問題の深刻化や脱炭素社会に向けた動きにより、年々厳しくなっている。また、脱炭素に向けて、電気自動車をはじめ、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、マイルドハイブリッド(48Vハイブリッドなど)など、クルマの電動化が進み、ピュアな内燃機関を搭載したクルマのラインナップが減少している。このような社会的な動きから、直列5気筒エンジンは近いうちにラインナップから消えてしまう可能性があるといえるだろう。
今がラストチャンスとなる可能性がある、唯一無二のサウンドを奏でる5気筒エンジンを体験したい、あるいは購入したいのであれば、乗れるうちに乗っておいたり購入したりしておいたほうがよいだろう。