クルマを駐車させるときにかけるパーキングブレーキ(駐車ブレーキ、ハンドブレーキ、サイドブレーキともいう)は、手で引いて解錠するタイプのほか、足踏み式や、ブレーキをかけるときは足踏みで、解錠するときは手引きといった方式など、さまざまな種類が存在する。
中でも近年普及が進んでいるのは、スイッチひとつでパーキングブレーキをかけたり解除したりできる電動パーキングブレーキだ。今回は、高級車から軽自動車まで普及している電動パーキングブレーキの概要およびメリット・デメリットを解説する。
電動パーキングブレーキとは?

電動パーキングブレーキは、パーキングブレーキのワイヤーを引いたり解錠したりする動作を電動化したものだ。近年では、高級車から軽自動車まで、さまざまな車種に採用されている。電動パーキングブレーキの操作レバーは、パワーウィンドウスイッチのような形状になっていることが多く、引くとパーキングブレーキがかかり、押すとパーキングブレーキが解除されるというように「引く」または「押す」の動作で作動させる。
これまで主流だった手引きタイプと比べると、サイズがコンパクトであり、車内デザインの造形を損なわない点が特徴である。また、電動パーキングブレーキを装備すると、ブレーキオートホールド機能を使うことができるのもポイントとなっている。
ただ、車種(そのクルマの目指す方向)によっては、あえて電動パーキングブレーキを採用しないという事例も存在する。例えば、トヨタ GR86やスバル BRZは、スポーツドライビングを楽しんだりドリフト走行を楽しんだりできるモデルとしても知られている。このようなクルマに電動パーキングブレーキを採用してしまうと、サイドブレーキを使ったドリフト走行を楽しむことができなくなる。そのため、あえて手引きのパーキングブレーキを採用し続けている。
ブレーキオートホールドは便利な機能?

先述したとおり、電動パーキングブレーキを採用している車種の中には、ブレーキオートホールド(単にオートホールドと呼ぶ場合もある)を使用できる場合がある。ブレーキオートホールドとは、ブレーキオートホールド機能をオンにしているときにクルマが止まるとブレーキをかけ続けてくれる便利な機能だ。そのため、オートホールド機能が作動していれば、ブレーキペダルから足を離してもクルマが動き出すことがない。
クルマの停止とともに作動したオートホールドは、アクセルペダルを軽く踏み込むと自動で解除される。よって、赤信号でクルマが止まり、オートホールドが作動してブレーキがかかれば、信号が青信号に変わったときにブレーキペダルからアクセルペダルに踏み替える手間がなくなる。言い換えると、ブレーキホールドが作動したら、足の構えをアクセルペダルにしておくことでスムーズな発進ができるということだ。
ただし、断続渋滞のときはオートホールドが煩わしく感じることがあるだろう。少し進んで止まったかと思ったら再び進むという断続渋滞では、オートホールドの作動と解除を頻繁に繰り返すことになる。つまり、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み替えが多くなるということだ。 よって、断続渋滞のときは、ブレーキオートホールドよりもブレーキの踏み込み加減で速度調整をした方が操作が楽といえるだろう。
ブレーキオートホールドは便利な機能であるものの、交通状況によってはペダルの踏み替えが多くなるといったデメリットがある。このようなことからも、ブレーキオートホールドは、シーンに合わせて使い分けるのが良いといえるだろう。
電動パーキングブレーキのメリット・デメリット

電動パーキングブレーキには、主に次のようなメリットがある。
- 解除し忘れる心配がない(アクセルペダルを踏むと自動で解除される場合が多いため)
- 力が弱い人でも確実にパーキングブレーキをかけることができる(手引きのパーキングブレーキは引きが甘いとクルマが動き出してしまう可能性がある)
- オートホールド機能が使える場合がある
- 内装デザインがスッキリする
など
一方、電動パーキングブレーキにはデメリットもある。主なデメリットは次のとおりだ。
- パーキングブレーキスイッチの場所がわかりにくい
- 緊急時にパーキングブレーキでブレーキをかけるときに急ブレーキになることがある
- 寒冷地でパーキングブレーキが凍結してしまい解除できなくなる場合がある
など
緊急時にパーキングブレーキを使用してクルマを止めるという場面に出くわすことは多くないが、万が一事態が発生したときはパーキングブレーキを使ってクルマを止める必要がある。手引き式のパーキングブレーキであれば、レバーを手で引くという簡単な操作でブレーキをかけることができ、ブレーキのかかり具合も調整可能である。
しかし、電動パーキングブレーキの場合は、スイッチレバーを長押しするという操作しかできない。そのため、ブレーキのかかり具合を調整することが難しい。また、そのときの速度によっては急ブレーキになることもあるだろう。そのため、電動パーキングブレーキは、緊急時の対応が難しいといえる。
寒冷地でクルマを駐車させるときは、パーキングブレーキのワイヤーが凍結しないようパーキングブレーキの代わりに輪留を使うことが大半だ。もし、ギアをパーキングに入れると同時に電動パーキングブレーキが作動するクルマの場合、寒冷地でパーキングブレーキが凍結し、クルマを動かせなくなる可能性がある。よって、寒冷地でギアをパーキングに入れるのと同時にパーキングブレーキがかかるクルマの場合は取り扱いに注意しなければならない。
電動パーキングブレーキの利便性を確かめたいなら乗ってみる

電動パーキングブレーキには、さまざまなメリット・デメリットがあるが、一度使うとその利便性に気づき、手引き式や足踏み式などアナログのパーキングブレーキが手間に感じるだろう。
ただし、クルマを使うユーザーによって、アナログ式(手引き式や足踏み式など)の方が使いやすいと感じる場合もあることから、パーキングブレーキの使い勝手や使いやすさは体験しなければわからない。
そのようなときにおすすめなのが、さまざまなクルマをラインナップしている「おもしろレンタカー」だ。おもしろレンタカーであれば、多種多様のクルマを用意しているだけでなく、さまざまなパーキングブレーキのクルマがある。パーキングブレーキの違いによる利便性や使い勝手などを知りたいのであれば、おもしろレンタカーでクルマを借りて、パーキングブレーキの使い勝手や使いやすさを体験してみるとよいだろう。