「運転が難しい輸入車5選」その理由と乗りこなすコツとは?

輸入スポーツカーには、性能やデザインだけでなく「運転の難しさ」も魅力の一部となっているモデルがある。独自の駆動方式や強烈なパワーにより、乗りこなすには熟練が必要なクルマも少なくない。

この記事では、実際に「運転が難しい」と言われる輸入スポーツカー5台を厳選し、その理由と隠れた魅力を解説する。操る楽しさと難しさが紙一重の、個性派モデルたちに注目したい。

運転が難しいと言われているスポーツタイプの輸入車を5台ピックアップ

映画や小説などの作品では、こだわりを強く反映させると一部で反発を生んでしまう傾向があるように、クルマのキャラクターを際立たせる反面、運転が難しいという評価を受けてしまうこともある。

ここでは、実体験や巷に流れるインプレッションなどを元に、そのネガティブな面の強い部分をピックアップすることで、その車種の運転が難しいとされる部分を炙り出してみよう。

※以下、各車の簡単な特徴説明とマイナス評価の部分を解説

ダッジ・バイパー RT/10(初代)

ダッジ・バイパーは、V8・OHVの大排気量エンジンを標準搭載する脳筋的な大トルクマシンたちがひしめくアメリカ車の中でもひときわマッシブな存在だ。搭載されるエンジンは、クライスラーのV8シリーズ最大の6.4Lユニットを2気筒増やしたような7.9LのV10ユニット。

大型ピックアップトラックの「RAM」に搭載されているものをベースに、当時傘下にあったランボルギーニによってブロックを鋳鉄製からアルミ製に変更、ヘッドやピストンなどを高出力仕様にすることでハイパワー化が図られ、456psの出力と67.7kg‑mの極大トルクを発生。

車体サイズは2シーターとラゲッジの最小化に割り切ることで全長が4450mmとその巨大なエンジンのわりに短く、ホイールベースもトヨタ・GRスープラと大差がない。ただし、超トルクを受け止める335mm幅のリヤタイヤを収めるため、車幅は1920mmと乗用車最大クラスとなっている。

さてこのバイパーが運転が難しいと言われるポイントは、まず車体の距離感がつかみづらい点が挙げられる。キャビン付近は絞り込まれてそこからドンと張り出すリヤフェンダーのギャップにより、サイドミラーだけでは幅の感覚がつかみづらい。

また、フロントノーズが長いことから、低いアイポイントからでは前端がほぼ見えないのも、街中の転回でヒヤッとする場面が頻発するからである。そして最大の魅力であるV10ユニットによる大パワーも時にはアダとなる。慣れたと過信してアクセルを雑に踏み込めば、電子アシストの無い操作系では、簡単にスピンを招いてしまうだろう。

フェラーリ・348

フェラーリで運転が難しい車種というと「F50」がよく例に挙げられるが、エントリーモデルの意味合いもあるV8シリーズの「348」もクセが強いハンドリングの車種として名を挙げる者も多い車種である。この「348」はフェラーリのエントリーモデルとして「308」から続くV8エンジン搭載シリーズの3代目にあたる車種。

最大のポイントは、それまでの鋼管スペースフレームによる構成から、キャビン周りを中心にモノコック化されたこと。

しかしこの大がかりな構造変更がアダとなる。本来構造変更は高剛性化が主目的だが、生産性向上のウエイトが大きかったのか、高剛性どころか剛性不足による不安定なハンドリングが一部のメディアで酷評される事態を招いたのである。

これは中央のモノコックと前後の鋼管フレーム部の結合方法に問題があるとの指摘があり、高速走行等でボディがヨレて不安定になるというクレームもあったようだ。これは初期型での問題で、マイナーチェンジ後のモデルでは改善されているとのこと。

ランボルギーニ・ムルシエラゴ 

ランボルギーニの「ムルシエラゴ」は、ランボルギーニがクライスラー傘下からアウディ傘下になって最初にリリースされたモデル。

外観は先代のディアブロから一気に垢抜けて大幅な進化が感じられたが、中身は鋼管スペースフレームという旧態依然のもので、新技術によるブラッシュアップが入ってはいるものの、乗り味はディアブロの延長といったものだった。

そのシャーシに搭載されるのは、これもカウンタックの系譜の延長にある、水冷V型12気筒DOHCの6.2Lエンジンで、588psの出力と66.3kg-mの極大トルクを発生する。駆動系はディアブロから引き継いだ4輪駆動のシステムで、その極大トルクを4輪で分散させるカタチだ。

しかしこの4輪駆動がクセ者で、タイヤのグリップ範囲内であれば後輪駆動では味わえない加速Gをもたらしてくれるが、グリップが失われた際の挙動は後輪駆動より複雑になる。特にカウンターステアを当てるようなときの挙動に慣れが必要で、スピン回避のカウンターステアでノーズが外に逃げる挙動を発生させて、あわやコースアウトという報告例も散見されるのである。

アルファロメオ・4C

アルファロメオの「4C」は、アルファロメオ初のミッドシップレイアウト車として、日常の使い勝手をまるで意識していないかのような、ただ走りを楽しんでもらいたいという割り切りによって設計されたアツい車種だ。

その無駄を削ぎ落としたムキ出しの走りによって、そこに魅せられた多くのファンを獲得している。シャーシはCFRP製のモノコックという現代のスーパーカーの主流の手法を採用し、高剛性と軽量化を両立。乾燥重量は900㎏を切る895㎏という驚異の数値を達成。

エンジンは1.7Lの直列4気筒ターボと小排気量だが、燃費優先のダウンサイジングではなく、コンパクトスポーツのためのパンチの効いた240ps仕様となっていて、軽量な車体と相まって加速性能に不足はない。この魅力に溢れる「4C」が運転が難しいとされる理由は、いまどきかなり希少なパワーアシスト無しのステアリングを採用している点だ。

おそらくは軽量化と接地感のダイレクト化を狙ってのことだと思われるが、車輌が動いているときはメリットの方が大きいものの、徐行時の取り回しや、駐車時等の“据え切り”が必要なシーンでは、一気に“苦行”に変わってしまう。これは慣れで解決する問題ではなく、ひたすら頑張るしかないのが辛いところだ。

ルノー・メガーヌRS(BFB)

ルノー・「メガーヌRS」は、大衆向け“Cセグメント”の「メガーヌ」をベースとしたホットモデルで、日本車では「シビック Type-R」と真っ向からぶつかり合い、“ニュルブルクリンク”のタイムアタックでFF車最速の座を争っている。

「メガーヌ」をベースに、ルノーのモータースポーツ部門「ルノー・スポール」によって、シャーシの強化、高性能サスペンションの装着、ブレーキの強化、高性能エンジンへの換装などがおこなわれ、大幅な戦闘力の向上が図られている。

この「BFB型」は「メガーヌRS」としては3代目となり、エンジンは“ルノー・スポール カーズ”と“ルノー・スポール レーシング”の2部門で共同開発された本格仕様の1.8L直列4気筒ターボを搭載。出力は300psの大台に乗り、42.8kg-mの大トルクを発生させる。

そのポテンシャルは、ツルシのままでサーキットに持ち込んでかなり高レベルのラップタイムを記録できるもので、エンジンの出力特性は鋭く、実際の数値以上に高く感じられるのである。

ニュルで最速を争う実力は伊達じゃないなと思わせる高性能が実感できるが、運転が難しく感じるのはその高い出力とFFという駆動方式の組み合わせの部分。サーキットのような路面が整ったシーンでは問題にならないが、路面に大きめの凸凹やうねり、わだちなどがある場所でのアクセルのワイドオープンは相当に気を付けたほうがいい。

FFは駆動輪と躁舵輪が同一のため、大きなパワーが前輪に掛かった際に路面のうねりにステアリングが取られ、パワーの勢いによりノーズが大きく外に飛び出すような挙動に見舞われる恐れがある。この挙動は電子のアシスト機能では収拾が難しく、慣れないとコースアウトを招く恐れもあるので注意が必要だ。

まとめ

以上、輸入車で運転が難しいとされる5つの車種をピックアップしてみた。それぞれの車種には得意とするシーンや速度域があり、運転のアジャストで評価は変わる可能性が高い。

それぞれの車種で難しいとされる理由は、裏返せばクルマのキャラクターを際立たせるためのものであり、それをうまく引き出したり受け流したりすることで難しさは楽しさへと転化できる可能性を秘めているともいえる。

一度の試乗でその境地に至るのは難しいかもしれないが、長く乗ることでそれをメリットに変えるのも、そのクルマを操る楽しさの一部であるといえる。