クルマやバイクなどの車両に搭載されているエンジンの多くは、吸気・圧縮・燃焼・排気の4工程を繰り返す4ストロークが主流だ。かつては、2ストロークエンジンもあったが、環境問題の観点から2ストロークエンジンは徐々に姿を消していき、現在ほとんどが4ストロークエンジンとなっている。
実は、エンジンには2ストロークや4ストロークのほかにも、5ストロークや6ストロークといった珍しい内燃機関があることをご存知だろうか。今回は、見聞きする機会の少ない5ストロークエンジンとはどのようなものかを解説する。
5ストロークエンジンとは?

5ストロークエンジンは、4ストロークエンジンの4工程目で排出される排気を使って、別のシリンダーを動かすエンジンだ。
5ストロークエンジンは、3つのシリンダーで1ユニットとして構成されている。このうち2つのシリンダーは通常の4ストロークエンジン構造である。この2つの4ストロークエンジンのシリンダーの間に排出ガスによりピストンを動かすシリンダーが中央に配置されている。
左右の4ストロークエンジンの4工程目にあたる排気によって排出されたガスは、一般的にマフラーに向かっていくが、5ストロークエンジンの場合は、別のシリンダーにつながっている。
別のシリンダーに送り込まれた排出ガスは、排気の圧力によってピストンを押し下げ、回転運動へと変換する。このように、4ストロークエンジンの工程に追加の工程が加わるのが5ストロークエンジンだ。
言い換えると、排出される排気を利用して別のシリンダーのピストンを動かし、回転運動に変換しようというのが5ストロークエンジンなのである。
この5ストロークエンジンは、排気を利用するため、圧力というエネルギーを有効に活用することができる。しかし、現在の市販車に目を向ければ分かるとおり実用化および市販化されていない。すなわち、メリットをデメリットが上回っているために、市販化および普及しなかったのである。
では、5ストロークエンジンには、どのようなメリットやデメリットがあるのだろうか。
5ストロークエンジンのメリット・デメリット

5ストロークエンジンの主なメリット・デメリットをまとめると次のようになる。
5ストロークエンジンのメリット
- 排出される排気の圧力を使って別のピストンを動かして動力を得る(排気圧力という未利用エネルギーを再利用している)
- エンジン回転がスムーズになる(エンジンの回転運動を手助けする機構となっている)
5ストロークエンジンのデメリット
- エンジン全体のサイズおよび重量が増加する(4ストロークエンジンのほかに別のシリンダーおよびピストンなどを用意しなければならない)
- シリンダーのフリクションロスが大きい
5ストロークエンジンには、上記のようなメリット・デメリットがある。5ストロークエンジンは、革新的な技術ではあるが、フリクションロスが大きいことやエンジンサイズが大きくなるなどのデメリットのほうが大きいために現在も実用化および市販化されていない。
排出ガスを再利用する技術は他にもある

5ストロークエンジンは、排出される排気を活用する構造である。実は、このような排出ガスを利用したエンジンは他にもある。
その代表的な例が、排気ガス再循環(EGR)やターボチャージャーなどだ。
これらの技術は、環境性能向上のために使用される場合やエンジンパワーを増大させるために使われるなど、さまざまな用途で採用されている。
また、ターボチャージャーは、ダウンサイジングターボエンジンに代表される小排気量エンジンを高出力化する技術としても活用されている。つまり、排出ガスを利用したエンジンは現在も進化を続けているということだ。
このように、5ストロークエンジンを採用せずとも、排気ガスを利用した技術はある。今後も内燃機関がある限り、これら排出ガス活用技術は進化し続けるだろう。今後、どのような進化を遂げていくのか楽しみだ。
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5ストロークエンジンのように、クルマのエンジンにはさまざまなタイプがある。エンジンの構造差による走行フィールを楽しめるのは、各自動車メーカーが長い時間をかけて長年にわたる研究と開発の積み重ねがあったからである。
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